少女最後の夕べ その後 一幕

 彼女の花嫁姿を正面から見ることはできなかった。もちろん花嫁衣装を拵えたのは彼の店であるし、彼自身、その衣装の準備を手伝い、彼女と衣装を合わせるのを外から手伝ったりもしていた。
 彼女は最高級の絹で織り上げたその着物を試しに身に着けて、どこか困ったような表情を浮かべていたのも覚えている。
 だがいざその日になって、花婿の家に行くために彼女がその衣装を身にまとい、美しく化粧をしたその姿を直視することができなかったのだ。それでも、花嫁の行列がゆっくりと通りを登っていく時のその後姿は、しっかりと目に焼きついている。
 夜の薄闇の中、店の軒先にいくつも並んでいる提灯の灯りに照らされた白無垢姿の彼女の姿は、とても幻想的な光景だった。
 今彼女は何をしているのだろう。もう町の「上」に行ってしまった彼女に簡単に会うことはできない。ただ、時折着物の注文を受けるので、それだけで彼女がいるという消息は分かる。送る予定の織物を撫でながら、目を瞑った。紅葉を散らした秋色の着物は、彼女の白い肌によく映えるだろう。
 (了)